CHAPTER03

戦乱の歴史と
物語を描く

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長嶋

はい。ではもう一本のムービーの方なのですが……実は、当初はこれまでお話ししてきた神話のムービーと合わせて「一本の動画」にする予定でした。
ただ、物語の構造上、どうしても途中で分けようということになり、切り離して作ったのが次のムービーです。

前田

これまでお話ししていたのが、『カルドセプト』の世界そのものの始まりを描いた出発点となる内容だとすると、こちらは本作『ビギンズ』の物語の出発点となる、ある戦乱の歴史を描いたものです。
「戦況ムービー」と呼んでいましたね。

長嶋

では、先にムービーを見てから色々とお話を伺いましょうか。

戦況ムービー再生

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長嶋

はい、ありがとうございます。
これは解説しますと、『カルドセプト』の石版が地上に舞い降りた後、その石版の力を使って様々な能力を発揮した人間たちが現れ、やがてその力で権力を持った人々が色々な国を作っていった……という歴史を描いたお話です。

ここのパートの制作は、苦労の方が多かった印象なのですが、皆さんいかがでしょうか?

トム

実は、先ほどのオープニングの「神話ムービー」と比べると、こちらの「戦況ムービー」の方が、むしろスムーズに進んだ記憶がありますね。
世界観や音の方針、映像のトーンがすでにバシッと固まった後に一気に制作したので、そこまで迷うところはなかったかなと思います。

ただ、確かに「尺」の問題はありました。解説しなければいけない情報量がとにかく多かったので、それをどう分かりやすく見せるかという点で、かなりカットチェンジが多くなっているんですよね。
「映像とテロップを見れば内容がしっかり伝わるように」というところに落とし込む点は、ちょっと大変でした。

あとは、キャラクターの絵と実際のゲーム内で使われている世界地図とのコントラストを合わせるのにも苦心しました。
自然に見えるように馴染ませつつ、僕らUZZらしい手作り感や、印象に残すための演出をあと一歩、二歩踏み込んで表現するにはどうしたらいいか、と。

そこで「戦況によって地図上の勢力圏が塗り潰されていく時の演出に、水彩絵の具がじわっと滲むような表現を入れよう」というアイデアが出てきたのですが、そのあたりのことはすごく記憶に残っていますね。

杉元

はい、そうですね。
あの水彩の演出に関しては、最初に「どうやって勢力図の色が塗られていくか」を検討していた段階で、わりと早く提案させていただいて。
ただ、キャラクターのイラストが地図の上に乗っかった時に、ちゃんとキャラクターが映えるような「色味の調整」には、結構大変な思いをした覚えがあります。

長嶋

実はこれをお願いしている当時、ストーリーがまだ完全に決着していない頃だったんです。
なので、「さあ、どう映像に落とし込もうか」と手探りな部分もありました。
だから僕の中では、ここはちょっと苦しい思い出として残っているんですよね(笑)。

最終的に音を合わせ、色を合わせ、尺を合わせ、それからテロップを合わせる、といった全体を統合していく部分での苦労が多かったんじゃないかな、という感じがしています。

前田

映像のどのタイミングで文章を区切ろうか、といった見せ方のバランスは、結構トムさんと協議した記憶があります。

トム

うん、そうでしたね。

前田

あとは長嶋さんと一緒に、このムービーで描いている世界――本編では「八年戦争」と呼んでいますが――、物語が始まる直前にあった、大戦の内容ですね。
その複雑な世界情勢を「どうやったらなるべく分かりやすく、かつ格好よく伝えられるか」という原稿作りの部分も、結構悩んだところでした。

長嶋

今回、『カルドセプト』のストーリーに関しては……若干この場の趣旨とは違う話になってしまうかもしれませんが。
ゲームの構造上、必ずバトルの前後に掛け合いが入り、しかも「すべて主人公が勝利する」という大前提が決まっているんです。
つまり、ストーリーの中で主人公の敗北を描くことが一つもできないんですね。

納口

うん。うん。

長嶋

そうすると、後から振り返るとどうしても「勝者の歴史」をただ辿るだけになってしまい、何をやっても主人公が勝ち進んでいくお決まりの形になってしまう。
その制約の中で、どうやって色々なキャラクターを絡めた見応えのある群像劇にするか、という点には非常に苦労しました。

それから、次のステージに進むごとに物語の展開や毛色を変えていかなければならない。
テンポよく進めながらも、内容を深く描きたいという矛盾に頭を悩ませましたね。

内容画像
納口

あの当時、長嶋さんはシナリオですごく悩んでいらっしゃいましたけど、実は絵コンテや設定画も同時に描かれていましたよね?

長嶋

絵はですね……描いてました(笑)。
ただ、ネタバレなのでここではお出しできないのが残念なのですが。

納口

シナリオを書きながら絵まで描かれているのは、大変そうだなと思って見ていました。

長嶋

いや、むしろ絵を描いている方が楽しいですね。シナリオは本当にいかんです(笑)。
プロットを「やっぱり変えよう」となると、どこから手をつけていいか分からなくなりますし、一箇所に手を入れると、ドミノ倒しのように全部の整合性を直さなきゃいけないという……あの修正の大変さは本当に堪えました。

前田

うん、うん。

長嶋

トムさんも、映像の構成とデザインの両方をやられるから分かりますよね?

トム

そうですね、よく分かります。
文字の修正が入ると、最悪の場合は「全直し」になりますからね(笑)。
慎重にやらないと大変なことになる。

長嶋

嘘がつけないし、ごまかしが効かない。
絵だと、こんなことを言ったらあれですけど、多少の演出でごまかしが効く部分もあるのですが、文章はそうはいかないので。

制作の途中、そういった悩みも皆さんに色々とご相談しながら進めていたなと思い出します。
納口さん、あれですよね。ラストステージの背景美術がなかなか決まらなかった時のお話。

納口

あ、それ言っちゃって大丈夫なんですか?
ネタバレになるかなと思って、僕は今言わないように気を遣っていたんですけど(笑)。

内容画像
長嶋

絵はまだ出さないので大丈夫です(笑)。

ラストステージの背景美術がどうしても決まらなくて、色んなデザイナーの方に何枚も絵を描いてもらったのですが、なかなか納得のいく着地点が見つからず……。
最終的には、僕が責任をとって描いたという経緯がありました。

納口

拝見しましたけど、いや、本当に執念というか、ものすごい熱意を感じました。

長嶋

実はあれも、本当は裏で「納口さんにお願いできないか……?」なんて前田さんと話していたんですけど。

納口

いやいやいや、とんでもない!

長嶋

ははは(笑)。さて、このパートに関して、他に何か思い出はありますか?

トム

あ、あれですよ! この「ダガル」っていうお殿様……あ、お殿様じゃない、世界観が違いますね(笑)。
王様、そう、王様の演出のところで、僕ちょっとやっちゃいましたよね。
本当、あの節はすみませんでした。

長嶋

ああ、そうそう!(笑) ここは、土壇場でトムさんのこだわりが炸裂したポイントでした。

前田

ミドルダガル登場!

長嶋

前田さん、説明してもらっていいですか?

前田

このムービーの最初、つまり大戦の始まりのシーンに登場するダガルは、――私たちは「ヤングダガル」と呼んでいたのですが――まだ若い姿なんです。

そこから時間が進んで「大陸を平定しました」となった時、画面の真ん中にドーンと出てくるダガルは、「一体どの年代、どの年齢であるべきか」という論争が勃発したんですよね。

長嶋

そうそう。

前田

実はゲーム本編の方では、ダガルはすでに大陸の王となった老人、通称「シニアダガル」として登場するので、制作段階ではヤングとシニアの中間のビジュアルが存在しない状況だったんです。
ですが、「大陸を平定した時期ならば、やはり働き盛りの中年期であるべきだろう」ということになり、急遽新しく「ミドルダガル」のイラストを追加した、という経緯がありました。

長嶋

実は僕はどちらでも良かったんだけど(笑)。

トム

「ミドルダガル」って、もしかしてムービーの中にしか出てこないんですか?

長嶋

ええっとそれが、本編でも大いに活躍することになりました。

トム

おお、そうなんですか!

前田

むしろ逆に、「ヤングダガル」の方がこのムービーの冒頭にしか出なくなったという。

トム

ああ、なるほど。ヤングダガルさん、すみません(笑)。

長嶋

そうなんですよ。
それで、本編の回想シーンでダガルが登場する時、当初の僕らの感覚ではヤングダガルを出そうと考えていたのですが、トムさんのおかげで、まだ尖っていた頃の「生き生きとしたダガル」をしっかり描くことができたかなと思っています。

納口

ミドルダガル、すごく格好いいですもんね。

前田

そうですね、貫禄があって。若さと貫禄が同居している感じで。

長嶋

ぜひそのあたりのお話は、ゲーム本編で確かめていただければと思います。

納口

はい、楽しみにしています!

長嶋

今回ご紹介したこれらのムービーは、ゲーム本編で観られるのはもちろんなのですが、公式サイトの方でも特別公開する計画をしております。
ですので、この記事をご覧になっていただいている方は、ぜひそちらもチェックしていただければと思います。