CHAPTER01
メインテーマの着想。
運命を背負った少年
- 長嶋
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ほっとしたところで、さっそく本題に入りましょう。
今回の『カルドセプト ビギンズ』の楽曲制作がどこから始まったのかというお話からしたいと思います。
きっかけは、2年半〜3年ほど前でしょうか、別の作品のレコーディング後の打ち上げで、僕が坂本さんにお会いした時に「次の作品はジョン・ウィリアムズで行きます!」と宣言したんです。
- 坂本
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はい、よく覚えています。確か、前作の打ち上げの夜…でしたよね。
- 長嶋
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実際にスタートしたのは、そこからかなり時が経ってからでしたが、坂本さんはとてもお忙しい方なので「大丈夫ですか…?」と恐る恐る伺った記憶があります。
- 坂本
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いやいや、楽しみにお仕事をお待ちしていました。
ちょうど一年前頃にメインテーマに関する打ち合わせがあって、そこから作り始めました。
かなり具体的なイメージのフィードバックをいただいて、少し後にデモ版が完成した、という流れだったと思います。
- 長嶋
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はじめの打合せは、大きな画面にコンセプトアートを映しながらゲーム企画を説明するところから始まりました。
この時メインテーマのイメージリファレンスとして、宣言通りジョン・ウィリアムズの『玉座の間(The Throne Room)』※1を提示させていただいたんです。- 『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』の楽曲
- 坂本
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はい、そうでした。
正直「これはすごいことになったぞ……!」と思いましたね(笑)。
「本気のオーケストラを作らなければいけないんだな」と。
しかも、あの曲のイメージですから「金管楽器が中心になるんだな」というのは、その時すごく強く感じました。
結果的に出来上がった曲は、そこまで金管を前面に押し出したわけではありませんでしたが、最初のすり合わせの段階では、同席した皆さんの頭の中に「派手派手しいオーケストラ曲」という共通認識があったのを思い出しますね。
- 長嶋
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現場でも作品のイメージをより早く共有するために、早い段階で「主題歌はこんな感じだよ」という話を社内でするんです。
今回はちょうどシナリオに着手したばかりで、ストーリーの着地点に悩んでいる時期でした。
その時に初めて、前田さんに「これで行きたい」と『玉座の間』を聴かせたんです。
- 前田
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よく覚えています。
『スター・ウォーズ』が大好きだったので、めちゃくちゃテンションが上がりました(笑)。
- 長嶋
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主人公の置かれている立ち位置の指針になった瞬間でもありました。
その後、すぐにノイジークロークさんにご連絡した形でした。
- 坂本
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なるほど。そうでしたか。
- 長嶋
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僕としては、同じジョン・ウィリアムズの曲でも、王道のメインテーマと比べると、どこか落ち着いた、かつ「大いなる運命」を感じさせるような楽曲を目指していました。
……ただ、最初のご相談の段階で、すぐに予算の話になった記憶があります(笑)。
- 坂本
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そうでしたね。あの曲のニュアンスを、いわゆる「打ち込み」で作る自信は僕にはありませんでした。
やっぱり、作品を牽引するクオリティの音楽にするならば、どうしても「人の息吹きが入った本物の音」にしたかったんです。
- 長嶋
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それと合わせて僕がすごく鮮明に覚えているのが、坂本さんが「得意かもしれません」とおっしゃったことです。
- 坂本
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あ、僕そんな偉そうなことを言っていましたか。 すみません(笑)
- 長嶋
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やはり、お得意な領域なんですか?
- 坂本
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うーん、僕の仕事の7〜8割がオーケストラ編成の楽曲なので、確かに作りやすさ、慣れという意味ではそうかもしれません。
お話を伺いながら、「あ、こういう楽器を使おうかな」という具体的な編成のイメージは、最初の打ち合わせの段階ですっと頭に浮かんでいましたね。
- 長嶋
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ちなみに坂本さんは、曲作りに着手される際、どんな情報から楽曲を組み立てていくのでしょう。
- 坂本
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そうですね、今回のように、イメージに近い実際の楽曲をご提示いただけるのは、間違いなくありがたいです。
まずは、共通言語となる音楽のサンプルがあるということは、大切なことのひとつだと思います。
そして、その次に重要になってくるのが「キーワード」です。
「何小節目からこの楽器を入れて」といったテクニカルな指示をいただくよりは、作品全体を象徴するような言葉をたくさんいただける方が、僕の場合は非常に助かります。
- 長嶋
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なるほど。言葉のニュアンスを拾うんですね。
- 坂本
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はい。今回で言えば、長嶋さんが口繁く「運命」「宿命」、そして「悲壮感」という言葉をおっしゃっていたのがとても印象的でした。
それをどうやって曲調に落とし込み、どの楽器を誰に演奏してもらおうか、ということを打ち合わせの間中、必死に考えていたなと思います。
- 長嶋
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確か、僕からは「大きな運命を背負った少年が、これから旅立たなければいけない。
その瞬間を切り取った曲にしたい」とお伝えしていましたが、逆に混乱させてしまいましたかね?
- 坂本
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実は僕の中で、『玉座の間』という曲には、そこまで「悲壮感」を感じていなかったんです。
なので、その曲の持つ華やかなオーケストラ感と、長嶋さんが求める「悲壮感を漂わせたい」というイメージを、自分の中で一致させるまでに最初は少しだけ苦労しました。
- 長嶋
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それは、僕の伝え方の問題だと思います。すみません……。
それで、最初に坂本さんから初稿となる一曲目を上げていただいたわけですが。
- 坂本
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はい。まずは自分なりの解釈で。
- 長嶋
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最初にいただいた曲は、目指す方向性は同じながらも、やはり先ほどの「悲壮感」というか、「影」の部分が弱い印象があって。
『玉座の間』も『スターウォーズのメインテーマ』と比べると、「光」より「影」の部分が多いのかなと。
その僕の勝手な解釈を、最初の段階で坂本さんにちゃんとお伝えできていなかったな…と、初稿を拝聴した時に大いに反省しました。
それからフレーズや音色について勉強しなければと、いろいろな楽曲を聴き込んで自分なりにプレイリストを作ったんです。
その中からこれだというものを見つけて、2曲目のリファレンスとしてぶつけたのが、サン=サーンスの『死の舞踏(Danse Macabre)』でした。
- 坂本
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そうでしたね。
- 長嶋
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全然タイプの違う曲だったので、逆に混乱させてしまったかもしれないのですが……(笑)。
僕としては、今作のメインテーマの主旋律をゲーム内の色々な場所で使ってプレイヤーの耳に刷り込んでいきたかったので、「ロンド形式」や「ソナタ形式」のような、同じ旋律が形を変えて繰り返される構成のイメージをお伝えしたくてご提示したんです。
その時の印象はいかがでしたか?
- 坂本
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その2曲目をいただいてから、頭の中がだいぶ整理されていきました。
繰り返してもくどくならないメロディについて考え始めたり、ただ悲壮感があるだけでなく「その先にちょっと光が見えるような描写」のバランスも見えてきたりして。
当時、長嶋さんが「光と悲壮感のバランスは、4対6くらいがいい」とおっしゃっていたんです。
なるほどと思って、曲の途中に少し元気になるパートを入れてみたり。
そこからだんだんと完成に向かっていった印象ですね。
- 長嶋
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それが第2稿の段階でしたかね。
そのあたりで、方向性がしっかり定まったと記憶しています。
- 陣内
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そうですね。その後の細かな修正についてもディスカッションを重ねながら、好きな音色や楽器のバランスについてたくさんお話しした記憶があります。
「笛の音色をどうするか」「弦楽器のバランスをどうするか」など。
確か、映画『もののけ姫』の「アシタカ」の話も出たんですよね。
- 長嶋
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そうでしたね!
- 陣内
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その時に「篳篥(ひちりき)のあの独特な音が好きなんです」とおっしゃったので、「それなら、オーボエの音色でそのニュアンスを表現してみるのはどうでしょう」といったお話もさせていただきました。
- 長嶋
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今回の物語の主人公は、まさに『もののけ姫』のアシタカのように「大きな運命を背負って、一人で故郷を旅立つ少年」という、非常に近い境遇なんです。
久石譲さんの素晴らしい主題歌でも、旅の途中で光が射し込むような瞬間に、曲が一番の盛り上がりを見せますよね。
あのドラマチックな展開を、今作のオープニングムービーでも表現できないかと考えていた時期でした。
だからこそ「笛」のソロで始めたかったんです。最初はたった一人で旅立った少年が、これから色々な人々と出会っていく。 その始まりにある「孤独感」を、あの笛の音色で演出したかった、というのが僕のこだわりでした。