CHAPTER02
密閉空間で生まれる音楽
- 長嶋
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僕たちから見ると、坂本さんには初稿、2曲目のリファレンスを踏まえた第2稿、そして微調整をした第3稿くらいでメインテーマをFIXさせていただいた感覚でした。
音楽制作の現場では、リテイクを重ねてそこに到達するまで、どれほどの葛藤やご苦労があるものなのでしょうか?
- 坂本
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今回は幸いなことに、そこまで大きな葛藤はありませんでした。
最初だけ、少し僕の解釈違いで方向性の異なるものをお出ししてしまいましたけれど(笑)。
通常、音楽制作において「作ったものに対して皆で集まり、意見を出し合いながら方向性を定めていく」というプロセスは一番大変なところでもあるんです。
しかし今回のプロジェクトは、打ち合わせにおける会話の精度がものすごく高かった。
だからこそ「あ、ここは違っていて、ここは残すべきなんだな」という取捨選択が非常にクリアに理解できました。
- 長嶋
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個人的にとても興味があるのですが、 坂本さんは、創作活動にあたってどういった時間の使い方をされているのですか?
- 坂本
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僕の場合は、実はPCの前で時間を使って悩むことってほとんどないんです。
大体は移動中や車の運転中に、なんとなく頭の中でぼんやりと曲のイメージを固めておいて、いざ作曲のスタジオに入ったら、一気にそれをPCへ落とし込んでいく、というやり方が多いですね。
- 長嶋
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ああ、そうなんですね!
日々の中でアイデアの種が降りてきて、それを一気にアウトプットしていくような?
- 坂本
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ただ、よく作曲家が言う「歩いていたら急に美しいメロディが降ってきた」みたいな格好いいエピソードは、僕には一度もないんですよ(笑)。
それよりも、「さて、どうしていこうかな」と思考を巡らせる時間として、車の運転中が僕にとって一番最適だということで。
密閉された空間で一人きりになれるからかもしれません。
- 長嶋
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ああ、分かります!
僕の場合は、ゲームのシナリオや絵コンテを考えるとき、急にキャラクターたちの会話が頭の中で始まり、忘れないように自分宛てのLINEに急いで打ち込む……みたいなことをやっています(笑)
- 坂本
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まさしくそれと同じ感覚だと思います。
あとは移動中の飛行機の中や、歩いているときですね。
でも、メロディとしてメモを取ることはありません。上手く説明しづらいのですが……音というよりは、何か「色」のような、ぼんやりとしたイメージが浮かんでいるんです。
- 長嶋
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可視化できない、感覚的なものなんでしょうね。
- 坂本
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そうですね。言語化はとても難しいのですが、そういう抽象的なイメージを頭の中に残しておいて、PCの前に座った瞬間にそれがバーッと音になって溢れ出てくる。
それを一気に打ち込んでいくスタイルです。
- 長嶋
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その抽象的なイメージは、時間が経っても忘れないものですか?
- 坂本
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忘れてしまったら、それは「そこまでの価値がなかったものなんだ」と思うようにしています。
忘れる程度のアイデアだったんだな、と。だから、最終的に自分の中にしぶとく残ったものこそが、一番良いアイデアだと信じて形にしています。
- 長嶋
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興味深いですね。
ちなみに、そのように一度PCでアウトプットする段階では、頭の中で「こういう音が鳴っている」という完成形まで見えている……?
- 坂本
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見えている場合もありますが、大体はまず、2分の曲なら2分間、ピアノの音でバーッとベースとなるコードなどを弾き続けます。
その後にメロディを考えていくことが多いですね。 今回で言えば、長嶋さんから「フルートで入りたい」という明確なオーダーをいただいていたので、まずは冒頭のメロディをフルートに担当させました。
そうしてピアノの上にフルートを重ねていくと、今度はだんだん、周りの他のパートの音が勝手に聞こえてくるようになるんです。
「あ、ここは裏でホルンをこういう風に動かそう」とか、「このメロディの隙間に、こういうリズムを入れよう」とか。
- 長嶋
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なるほど……!
- 坂本
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なんというか、脳内の「もう一人の自分」が次々とアイデアを提案してくる感覚なんです。
その提案に対して「いや、それは違うな」と却下したり、「お、それは面白いから聴いてみよう」と試したり。
- 長嶋
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面白いですね! 脳の中に「2人」いるわけだ。
- 坂本
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はい。必ず「提案する側」の自分と、「それを判断する側」の自分がペアで働いています。
ちなみに、全く提案されない場合もあって、そういう時は潔く一回全部消しちゃいます。これは上手くいかないパターンだな、と。
- 長嶋
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非常に興味深いです。僕はクリエイティブの領域として、絵を描くこととシナリオを書くことの両方をやっているのですが、その2つでも全然頭の使い方が違っていて。
今のお話は、どちらかというとシナリオを書くときの脳の使い方に近いですね。
シナリオも、まずはきっかけとなる最初のセリフを書き出すんです。
でも、誰も喋ってくれない沈黙の時もあって。
- 坂本
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まさしく、音楽もそういう感じです。
- 長嶋
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今回はおかげさまで僕たち自身も、坂本さんとのやり取りも、あまり迷い込むことなく進んでいけたのが本当に良かったです。