CHAPTER03

ファンタジーの原点と
その背景

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長嶋

お二人に共通しているのは、ファンタジーへの造詣の深さだと感じています。
その源泉がどこにあるのか、ぜひ伺いたいです。
何をきっかけに興味を持ったのか、何から学んだのか、あるいは影響を受けた作品でも構いません。

神宮

もともと昔からゲームが好きだったのですが、高校生の頃、ゲームのことをいろいろ教えてくれる友人がいて、その友人から『ウィザードリィ』を教わったのが大きかったですね。

さらに、その同じ友人が『D&D』の英語版を持ってきて、「みんなでやってみよう」と誘ってくれたんです。
当時はまだ英語版だったので、みんなで翻訳しながら遊びました。
かなり怪しい訳だったとは思いますが(笑)、そこから一気にファンタジーの知識が広がっていきました。
『D&D』をきっかけに、ファンタジーそのものがどんどん好きになって、『指輪物語』を読んだり、関連する知識を趣味として自然に集めるようになりました。

長嶋

やはり、ゲームがきっかけだったんですね。
『ウィザードリー』でしたら、やはりAppleⅡとかで遊ばれていたり?

神宮

いや、当時はシャープのX1で、日本語版の『ウィザードリィ』を遊んでいました(笑)。

長嶋

『ウィザードリィ』から入って、『D&D』へ進んだとなると、かなり深くファンタジーに入っていかれたわけですね。
そう考えると、『カルドセプト』は、まさに神宮さんにぴったりの題材だったのではないでしょうか。

神宮

本当にそうでした。
自分で企画した作品でもありますが、それまでに触れてきたファンタジーの知識を、きちんと形にできる場でもあったので、とても嬉しかった記憶があります。

長嶋

あれだけ多くのクリーチャーを生み出すには、かなり幅広い知識が必要だったと思います。
当時は今のようにインターネットで簡単に調べられる時代でもありませんでしたが、情報はどのように集めていたのでしょうか。

神宮

当時から持っていた『D&D』のマニュアルや、怪物・幻獣に関する辞典のような本をよく読んでいました。
その後、モンスターマニュアルのような資料本も少しずつ増えて、そうした書籍が、知識の土台になっていたと思います。

長嶋

松浦さんはいかがでしょうか。

松浦

最初にファンタジーに触れた原点として一番大きいのは、たぶん『ドラゴンクエストII』ですね。
そこから『ドラゴンクエスト』の世界に入っていきました。

それに加えて、小学生の頃は“剣と魔法”の世界観そのものがすごく好きでした。
映画で言うと、『ウィロー』がとても好きで、何度も観ました。
ビデオテープでも繰り返し観たくらいです。あの作品の世界観が、本当に大好きだったんです。
そういう意味では、自分はゲームと映画の両方からファンタジーに入っていった感じですね。
とにかく“剣と魔法”という世界が特に好きだった、というのが原点だと思います。

神宮

今のお話を聞いていて思い出したのですが、それ以前の原風景として、レイ・ハリーハウゼン作品の影響も大きかったですね。
ストップモーションの怪物たちが出てくるシリーズが本当に好きで、『ウィザードリィ』以前の、自分にとってのファンタジーの源流だったと思います。

長嶋

ハリーハウゼン!!
まさか、この名前が出てくるとは…。
やっぱり世代も近いから、ファンタジー体験も似ているんですかね。
なんだか嬉しいです(笑)。たしかに、当時の映画体験は大きかったですよね。

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神宮

そうなんです。
当時は、元ネタとなる知識まで持っていたわけではなかったのですが、そうした映画を通じて、ハーピーのようなクリーチャーにも自然に触れていました。
最初は映像作品のイメージがそのまま自分の中の“ハーピー像”になっていたんです。
でも、後になって資料を読むと、「ハーピーは女性の顔を持つ存在なんだ」といったことを知るようになって、そこから理解が深まっていきました。
今では馴染み深いクリーチャーたちの多くに、あの頃の映画体験がつながっているんですよね。

長嶋

ハリーハウゼン作品だと、僕は、『シンドバッド黄金の航海』(1973年)に出てくる阿修羅のような怪物がとても怖かった記憶があります。

神宮

ああいう一つひとつの怪物表現が本当にいいんですよね。

長嶋

そう!クレイモデルの造形と、ストップモーション独特の動きが本当によかった。
…いや、懐かしいですね(笑)。

松浦さんも、やはりそういった作品はご覧になっていましたか。

松浦

もちろんです。
そこからさらに広がっていく作品としては、『ダーククリスタル』や『ラビリンス』のような映画も大きいですね。

神宮

『ダーククリスタル』、いいですよね!
松浦さんのデザインを見ていると、ああいう作品と通じるものがある気がします。
特にキャラクターまわりの感覚に、すごく近いものを感じます。

長嶋

こうして聞いていると、お二人ともゲームだけではなく、80年代的な幻想映画や人形・怪物表現の系譜をしっかり通ってきているんだな、というのがよく分かりますね。

ちなみに、あの頃のファンタジー体験としては、ゲームや映画だけでなく、当時流行したゲームブックの影響も大きかったのではないかと思うのですが。

神宮

はいはい!

松浦

ありましたね(笑)。自分は『ドラゴンクエスト』のゲームブックをやっていました。
「○番に進む」とか、選択肢に従ってページを移動していく、あの形式ですよね。

ただ、なかなかうまく進めなくて、結局ゲームとして遊ぶというより、本として頭から順番に読んでしまうことも多かったです(笑)。

神宮

でも、それでも十分楽しいんですよね。

長嶋

分かります。ちゃんと攻略するというより、世界観を読むものとして接してしまう感覚もありましたよね。
神宮さんは、年代的に『火吹山の魔法使い』あたりから入っていたんじゃないですか?

神宮

はい。まさにあれにはまりました。
『火吹山の魔法使い』は、今でも初期ゲームブックの完成形の一つだと思っています。
挿絵のラス・ニコルソンも本当に素晴らしかったですね。

しかも、自分の場合は『D&D』を勧めてくれたのと同じ友人に『火吹山の魔法使い』も勧められて、そこから自然に『D&D』へ流れていった記憶があります。

長嶋

あの頃のファンタジー体験って、ゲームそのものだけでなく、絵の印象もとても大きかったですよね。
たとえば僕は、アスキー版『ウィザードリィ』の末弥純さんの絵が本当に大好きで、あのイメージに強く引っ張られていました。

神宮

分かります。ファミコン版ですよね?私もあの絵は本当に好きでした。

松浦

僕も大好きです。

長嶋

こうして振り返ると、皆さんかなり近いところに強く影響を受けているんですね。
ゲームそのものだけじゃなくて、そこに結びついたビジュアル表現も含めて、今の感性につながっているのがよく分かります。